【ESSAY #2】”自分の言葉で語る” ということ
(※以下、出産前の2016年6月ドイツにいた頃に書いたものです。)
先月、ドイツ語中級B1の資格試験を受けた。Hearing/ Writing/ Reading / Speaking (presentation) の4パートからなる、約5時間の大がかりなテスト。
費用も時間もかけるからには!!と、
分厚い過去問を1冊仕上げ、Speaking以外は自分なりに準備したつもりだった。
結果は不合格。
Speakingのプレゼン終了時点で、自分のポイントが各パートの合格ボーダー:6割をきっていたのだ。(57点)
くそ~!プレゼン以外は、結構できたのに。
他のパートの点数も教えてもらえないで不合格なんて。
受験勉強並に図書館に通い詰めてやった、
この1か月以上の苦労が水の泡。
正直目の前が真っ暗になった。
また、一番苦手のプレゼン(「ニートをどう思うか?」、「オーガニック食品の是非」などのお題をその場で与えられ各自10分プレゼン+質疑応答)も、致命的なミスをした覚えがなかった。
でも、いざ試験を振り返ってみると。
私の最大の敗因は、プレゼンを
【自分の言葉で語っていなかったこと】だった。
グループで行われるプレゼン試験で、
私のグループは、前のグループが終了時間をオーバーしたため、幸いにもお題を受け取ってから【規定の準備時間:3分】の3倍以上、10分ほどの時間があった。
そこで私がやったこと。
プレゼンメモを通常、箇条書きで用意するところ(3分では箇条書きが限度)、
時間があるの利用して、ガッツリ文章原稿を
用意したのだった。
見事に、私のプレゼンは、
自分の用意した原稿を読み上げることがメイン。
詰まることなく、文法や言葉の間違いは極力避けられたと思いきや、突然、試験官がプレゼンの途中遮って、
こう言った。
「あなたが今やっていることは、プレゼンではないですよ。紙を読んでいるだけ。それはプレゼンとはいいません。
今私達の目を見て、思っていることを話して。」
うむむ、、そうなんだけどな…。
勿論分かってはいたのだが、
その後も最後まで、紙から目を離せず、
私のプレゼンは終了した。
その間、頭の中にあったことは、ただ1つ。
”文法上ミスのないドイツ語を、途切れず話し続けること”。
文法が複雑なドイツ語は、
途中で文法間違いに気を取られていると、
頭が真っ白になっていくのは目に見えていた。
頭がフリーズして次の言葉が、出てこない。
それを避けるには、
”限りなく正しく話し、絶対に途切れないこと。”
それが、正解だと思い込んでいた。
終わって、この状況をドイツ人の友達に話すと、
「いや、それは一番ダメだよね。」
プレゼンを重視するヨーロッパでは、
幼稚園からプレゼン訓練を受ける。
彼女のプレゼンの授業では、
「紙を読み上げた瞬間、0点」という
厳しいルールさえあったとのこと。
場の空気をよく読み、臨機応変にその場に合う言葉を探して言う。
伝わらなければ、間違っても別の言葉で言い換えて、何とか、自分の考えを伝えようとする。その”柔軟さ”や”反射神経”が最もコミュニケーションに大切な姿勢だと。
文法や言葉が間違えていても、途切れても、
【自分の考えを伝えること】。
これが、私達に求められるプレゼンテーションだと。
その言葉を聞いた時、恥ずかしさでいっぱいだった。
日本人のプレゼンが昔から酷いのは、世界で有名な話。
企業/官公庁の会見でも、誤認を恐れるあまりの、原稿ナレーションのようなプレゼンにすっかり慣れっこだ。
しかし、そのプレゼンに熱が感じられるか。
プレゼンテーターの想いがどこまで伝わるのか。
たとえ間違いがあっても、
その場の空気を読み、言葉を必死に紡いだプレゼンと比べ、
聴衆にとって心に響くのは、どちらなのか。
答えは明らかだ。
日本の教育や社会の基本は、
「予め用意された正解を求めること」。
「極力間違いを起こさないこと」。
でも、本当に強いのは、
誤認や間違いを恐れず、
”臨機応変に、誠実に、話すこと”、
”自分の熱を伝えること”
なんだと思う。
自分のプレゼン能力の拙さ、
日本のプレゼン教育の重要性。
身銭をきって体験する、まさに身に染みるとは、こういうこと。
この1か月強の勉強期間、
試験代の200ユーロ、くそー!!
悔しい気持ちはいっぱいだけど、
謙虚に実力不足を反省し、
これが学べただけでも大きかったんだろうな。
これからは、たどたどしくても、
自分の言葉で、誠実に、
熱を伝えることを、
精一杯意識しようと思う。
▼B1試験を落ちた日、ドイツ人の友人がくれた手作りCertificate。笑
→試験は落ちたけど、いつもドイツ語で伝えようとする気持ちは十分B1レベルだよ、と。オフィシャルのCertificates よりも、ドイツでこんな友達をつくれたことが1番の財産。
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